『ユイスマンスとオカルティズム』(新評論)を入荷いたしました。
2010年 大野英士 新評論
ユイスマンス(1848-1907)はフランスの小説家である。ぼーごれーるやベルトランの影響のもと作られた処女作散文詩集『ドラジェの小筥』にはじまり、小説『マルト、一娼婦の手記』によって自らの進路を見出しました。ゾラに認められ、その弟子として自然主義を宣言した小説集『メダンの夕べ』に参加しましたが、やがてその文学館から離れ『さかしま』を書くこととなりました。小説『彼方』ののちカトリックに回心し、以後『出発』『大聖堂』『献身社』の三部作でカトリシズムの精髄を書き尽くしました。また美術批評家の一面もあり、モローやルドンを高く評価したことでも知られます。
本書は1895年の『出発』を契機にカトリックに回心し、宗教的なリゴリズム(厳粛主義)にこりかたまった「神秘主義作家」に転身することとなった、そのありえない逆転から問いをはじめています。ユイスマンスを通して西欧だけでなく、世紀末の知の大変動が広がっている一冊です。